てんぷらにっき

ほんとかうそとか。

小説風に小説記録 part1

今日は朝ごはんを食べてこなかった。

さすがにお腹が空いてしまったので、1限と2限の間の15分間の休憩時間に、大学の構内にあるローソンに、朝ごはんを買いに行った。


教室に戻り、ローソンで買ったチーズ風味の蒸しパンの袋を開けると、あたりにチーズの香りがただよった。

一個取り出し、柔らかくフワフワとした白黄色のそれに噛み付く。 それは一瞬で嚙み切れて、口の中ですぐに消えてしまうほど、ふわり柔らかく、口の中にしっとりと優しい甘さがひろがった。

私は 一個だけ食べて、二個目はビニール袋の中に残して、カバンの中にしまった。

ただ、袋から発せられた匂いは未だこの場に停滞しており、食べ終わった後にあらためて嗅いでみると、パンから漂う濃い加工されたチーズの香りは、チーズが嫌いな人にとっては、不快な香りになりえるように思われた。

もし、この香りを隣の席の人が受け付けなかったらどうしよう。 不安になりながら横を伺う。しかし 隣に座っている男子学生は何も気にしてないようで、白い半袖のTシャツの下にある中肉中背の背中を丸め、少し日に焼けた浅黒い首をすくめ、太い指の先に申し訳程度に備えてある小さな爪を何故か懸命にいじっていた。

私は安心し、小説を再び開いた。

今読んでいるのは、小川洋子の「海」という短編集だ。

82ページと83ページの隙間に、百円で買った青い安っぽいシャーペンが挟まっている。

今読み始めたのは、「銀色のかぎ針」 と言う短編だ。 82ページは空白で、83ページの
 
岡山駅を出発したマリンライナーは、しばらく、ありふれた田園風景の中を進む。

 

という一節から始まっていた。

主人公の向かいに座った老婦人が編み物を始める姿を見て、自らの母方の祖母を回想する話だ。

83ページの左下の端をつまみ、めくる。
そして84と85のページが目の前に現れる。

そこで私は、あれ?と思った。

85ページの裏に、2行ほどしか文字が印刷されていないのに気づいたからだ。

そこから少し早いペースで84ページと85ページを読み終えて、86ページを開く。すると、
 
「祖母の十三回忌の法要に」 端を渡りきると、もうすぐそこが高松だ。
 
という2行と、隣のページに


「缶入りドロップ」


という新しい物語の題名が記されていた。

ほぼ3ページで終わってしまった。

短いお話だったな。

そんな事を思いつつ、ふと顔を上げると、先ほどから教壇に立ち熱心に平家物語について語っている白髪の教授がこちらを見ていることに気がついた。

教授のいる教壇から、私のいる席までは目測で7mはある。また、私は前の席の女の子の背中の後ろに小説を置いていた。そのため、教授から私の席の小説が見えることは無い。
しかし、再び教壇を見てみると、依然教授と目が合っているように思われる。
 
私は仕方なく小説を閉じて授業を聞くことにした。

 

しかし教授が今何を話しているのか、私には全く理解できなかった。